2012年1月9日月曜日

けん玉を使った運動療法 (後編)1994

運動効果も科学的に実証
ところで、けん玉がそれほど運動としての効果があるかどうかという疑問もあるかと思います。それについて私が友人と共同研究した結果があります。
たとえば糖尿病の運動療法の基本を条件として、有酸素的運動であることや運動強度が4〜6METS(運動強度の単位)程度であること等が言われています。
私たちは20歳代の男女25名を対象に、実験を行いました。
「もしかめ」(もっとも単純な連続運動)をした場合、けん玉が有酸素運動であり、3.2METS(通常の人がゆっくりめに歩く速さである、60歩/分の歩行と同等)の運動強度が得られことがわかりました。さらにこれを膝、股関節の運動を伴って、全身を使ったやり方にすれば、3.6METSの運動強度(75〜80歩/分の歩行同等)にもなります。

けん玉大会でお年寄りの輪が
現在では、片麻痺のある患者さんの筋力増強を、目と手の協調性の向上、そして、痴呆防止などのために、運動療法にけん玉を導入しています。
また時々数名のお年寄りが集まって「けん玉大会」も試みています。みんなでいっせいに「もしかめ」の記録会をしたり、得意な芸を披露したりします。いい運動になるので、みんあ汗をかいてやっています。けん玉は運動になるだけでなく、人間関係のよい潤滑油にもなってくれます。

孫とけん玉で遊ぶように
このけん玉によるコミュニケーションは、患者さん同士だけでなく、患者さんの家族の中にも波及しています。「孫と一緒にけん玉をするようになった」と言う方も何人かいたっしゃいます。「テレビゲームでは一緒にできないけど、けん玉なら一緒に楽しめる」と言って喜んでくださっています。
けん玉は年齢を越えて、家族みんなで楽しむことができるのです。

また、私は日本けん玉協会の一心病院支部※を作り、ここの認定支部になっているので、けん玉大会ではその都度、みなさんに級を認定し、賞状をさし上げています。前回は4級、5級の取得者がでました。
そんなことが少しでも励みになり、今後みなさんにもっとけん玉の楽しさを知っていただければと思っています。(談)

※2012年1月現在では、一心病院では、豊島支部として活動継続中。

前編はこちら↓
http://health-kendama.blogspot.jp/2012/01/blog-post.html 

けん玉を使った運動療法 (前編)1994

1994年に発刊された「生命の樹」という季刊紙に載った内容を紹介します。
理学療法士、作業療法士、けん玉道四段 吉本秀一

意外に喜ばれた「けん玉療法」
私は以前から、けん玉を運動療法にとり入られないかと考えていました。お年寄りが扱うのに抵抗が少なく、無理なく遊び感覚でできる運動の一つとして、運動が適していると思ったからです。
 そこで試しに三年ほど前より、待ち時間に患者さんが自由に使えるように、リハビリ室にけん玉を置いてみました。
すると意外に患者さんたちが喜んでけん玉をし始めました。それで知ったことは、関東近辺で育った70歳前後のお年寄りは、幼少の頃にけん玉をしたことがある人が多いということでした。
作業療法などをする場合、過去にまったく経験したことがないことをするのは、心理的抵抗があるものです。本人の趣味を考慮せずに、急に陶芸や洋裁を始めてもうまくいきません。その点けん玉なら、「子供の頃やった」と言って、喜んで始められます。

無理なく続けられるけん玉
また糖尿病などの運動療法として、主に歩行が薦められていますが、お年寄りの場合、特に冬などは寒いと言って外に出るのをおっくうがります。その点から言っても、屋内でも手軽に続けられる運動として、けん玉は理想的と言えるでしょう。

けん玉教室で(1994年)










後編はこちら↓
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