2014年2月9日日曜日

「けん玉の運動強度」(考察・まとめ)その5

「けん玉の運動強度」(考察・まとめ)その5

Ⅳ,考察
1)運動の質について
 今回の結果より、「もしかめ」における運動では定常状態がみられたことにより、一定の外的運動率の軽・中度運動であり、有酸素性の範囲内にある運動だと考えられる。
2)運動強度について
 仮設で述べた100m/分の速さでの歩行は、日本体育協会スポーツ科学委員会の換算表から、今回の実験における対象群の平均体重66.1kg・持続時間10分で消費カロリーを求めると71.6kcalであり、実際値(35.3±10.6kcal)とでは大きな差が生じた。つまり、歩行で例えるならば「もしかめ」の消費カロリーの平均値は、60m/分の速さでの歩行とほぼ等しく、100m/分の速さと60m/分の速さの違いに匹敵する。
 自覚的運動強度の面ではV.A.S.の測定からRPEに換算し「やや楽である」(いつまでも続く・充実感・汗が出る)感じとなり、60%VO2maxに相当する。このMETSと自覚度との間で、強度差が生じた。その要因としては、その運動の習熟度の影響が考えられる。一般に習熟度の浅い運動や苦手な種目を行う時、実際よりもきついと感じることは日常よく経験することである。波多野は、運動が不慣れなうちは自覚度と実際の運動強度との関係がなかなか安定しないとしている。このことから、今回得られた「もしかめ」の運動強度は仮設した運動強度よりは低いが、初心者や不慣れな者に対しての自覚的強度の面からみれば妥当な運動強度であると言える。
 また、「もしかめ」の運動のタイプでは、全身タイプの方が運動強度が3.6±0.6METSであり、上肢タイプと比較すると約1METS高く、より強い運動強度となる。そのため、より強い運動強度が必要な場合は、膝・股関節の運動を伴った「もしかめ」を行うことが望ましい。
3)「けん玉」の種目・指導についての検討
 楽しさや、おもしろさ、継続性を保つには他の様な種目を加えつつ、「もしかめ」を主体とした内容にすることが望ましいだろう。
 患者に対して「けん玉」を実施するにあたっては、手のみの運動として行おうとする者に対して、膝・股関節の動きを伴った全身的な運動となるように注意し、指導をしていくことが課題となる。このことは、前述した運動強度・消費カロリーからの面からも言えることであろう。
 以上のことから「けん玉」による運動は、今回の実験で得られた質・強度の面と、前述した「けん玉」の利点を総合的にみれば、成人病に対して行う運動として適するものと考える。

Ⅶ:まとめ
(1)「けん玉」の種目の一つである「もしかめ」は、一定の運動強度を与える有酸素運動であり、60m/分の速さの歩行と同等(約3.2METS・約35kcal)の運動強度である。
(2)「もしかめ」のパターンには、上肢のみでのパターンと膝・股関節の運動を伴った全身パターンがあり、全身タイプの方が運動強度は、より高く普通の歩行速度(約75〜80m/分)程度の強度(約3.6METS・約40kcal)がある。
(3)運動が上肢タイプとなる者に対しては、全身運動としての「けん玉」を指導していくことでより強い強度が与えられる。

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2014年2月8日土曜日

「けん玉の運動強度」(仮設・結果)その4

「けん玉の運動強度」(仮設・結果)その4

Ⅳ,仮説
 1,「もしかめ」は、心拍数で定常状態を示し、一定の強度を与えられる有酸素運動である。
 2,「もしかめ」でのMETSの測定により、中等度の運動強度(40〜60%VO2max程度、METSでは4〜6METSつまり平地歩行を約100m/分で歩く速さに相当する)が得られる。よって、運動療法の一つとして「けん玉」を組み入れていくことは、自転車エルゴメーターや歩行の欠点を補うのに適する。
 3,運動強度は「もしかめ」のうまさによって2つに分けることができる。
 ①上手くない者の場合の運動強度は初心者ほど手だけの運動で行おうとし、失敗も多いため上手な者に比べて少ない。
 ②上手な者の場合あ、股関節・膝関節の屈伸運動を伴った全身運動で行う者が多く、初心者に比べて、運動強度は多くなる。


Ⅴ,結果
 総数での結果は表3の通りである。
対象群として、連続数から200回未満と200回以上に分類し、運動のタイプから上肢のみで「もしかめ」を行っているタイプ(以下、上肢タイプと略す)と、股関節、膝関節の運動を伴った全身運動のタイプ(以下、全身タイプと略す)に分類できることが、観察の結果得られた。
 「もしかめ」200回未満(d.f.15)と200回以上(d.f.8)を比較するためにt検定(d.f.23,α=0.05)を行った。その結果、 METSは「もしかめ」の連続回数によって異なるとは言えない(p>0.2)となったが、心拍数では「もしかめ」200回以上の方が高く、自覚運動強度においてもより「きつい」という方向につけた人が多かった(表4 連続数・運動タイプによる分類)。
  「もしかめ」の連続回数よりも、運動のタイプによってMETSに差があるかを調べるために、上肢タイプと全身タイプで比較した。「上肢タイプ」と全身タイプ」では、全身タイプの方が運動強度がより強いかどうかをt検定(d.f.23)したところ、心拍数・METSの項目について有意差がみられた。

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「けん玉の運動強度」(対象と方法)その3

「けん玉の運動強度」(対象と方法)その3

Ⅱ:対象
 「けん玉」の経験の有無を問わず、20歳代の健康な成人男女25名(平均年齢24歳±2.9歳、男23名、女2名)を対象とした。

Ⅲ:方法
 今回の実験では、対象者の安静時と運動時の心拍数・呼気量・呼気ガス濃度(O2%、CO2%)測定することから運動の質と強度(METS)を計測することから運動の質と強度(METS)を計測した。「けん玉」の種目の一つである比較的連続性の強い「もしかめ」(大皿〜中皿〜の繰り返し)を選択して行い、「もしかめ」の速さに関しては、日本けん玉協会では1分間に135回以上の速さとされている。しかし、初心者のとっては速すぎると思われたため、今回は「うさぎとかめ」の童謡に合わせた速さである108回/分で行うこととした。
 実験で計測・記録する内容は、①心拍数・呼気量・呼気ガス濃度(O2%、CO2%)・もしかめ」失敗回数。②運動中の被験者の動作観察。③実験終了後に自覚運動強度をVisual Analog Scale(以下V.A.S)にて記録。④最後に感想を聞く。

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「けん玉の運動強度」(はじめに)その2

1:はじめに その2

 伊藤は、運動の種類の設定として、(1)運動の種類とその質、(2)運動強度、(3)運動時間と実施時間帯、(4)運動頻度の4項目を原則とし、以下の8項目(表2)を考慮して総合的になされるべきとしている。
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表2 運動設定に考慮すべき項目点
(1)運動強度の設定がしやすいこと
(2)全身の筋肉を広範に使用すること
(3)筋肉にリズミカルな刺激を与えること
(4)永く続けられ、生涯化しやすいこと
(5)いつでも必要なときにできること
(6)どこでもできること
(7)誰にでもできること
(8)楽しくできること
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 例えば、糖尿病の運動療法では、その基本条件として、(1)有酸素的運動であること、(2)一定して負荷のあるもので少なくともその運動を10分以上継続して行えること、(3)運動強度としては40〜60%VO2max程度、METSでは4〜6METSが適度な量(例としては、平地歩行を6〜7km/時で歩く速さに相当する)、(4)毎日続けられること、が挙げられる。
 しかし、今まで「けん玉」がどのような運動の質であり、どの程度の運動強度ののもであるかが未知であるために具体的な運動強度の設定が困難であった。また、「けん玉」は自転車エルゴメーターや歩行とは異なり、技術的な要素(習熟度)が運動強度に影響を与えると考えられる。
 そこで、今回の研究では実際に「けん玉」を取り入れた運動が①一定の負荷を与えられる有酸素運動のものであるか、②どの程度の運動強度のものであるか、を明確にすることに主眼をおき、さらにその運動強度が習熟度の差によってどのように影響されるかと検討していく。

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2014年2月6日木曜日

「けん玉の運動強度」(はじめに)その1

私達の専門学校卒業小論文(平成5年)の題は、
「けん玉の運動強度」でした。
その内容をそのまま紹介します。
いくつかに分けてアップさせていただきます。

「けん玉の運動強度」

キーワード:けん玉・有酸素運動・METS・運動強度
発表者:有馬博人・高鳥 真・吉本秀一

1,はじめに
 我々は、学院の中で「けん玉クラブ」を創りスポーツとしての「けん玉」を行なってきた。四年にわたる学院生活で得たこの経験を、リハビリテーション分野で有効に活用できないものかと検討した結果、成人病への運動療法の一つとして利用できるのではないかと考えた。
 今日、心臓病や脳卒中、癌、糖尿病などのいわゆる成人病に対する予防や治療が盛んに注目されてきている。これらの成人病は、ライフスタイル(生活様式)の影響が大きいと言われている。
 また最近では、これらの成人病に対しての意識が高まり、多くの人々が自己の身体管理を意識しスポーツトレーニング、体操なふぉを生活の一部に取り入れている傾向にある。実際に患者自身が生活の中に取り入れている運動は、運動強度が設定しやすいことや、特別な訓練を必要としない誰にでも行えるなどの利点から自転車エルゴメーターや万歩計を利用した歩行を主体とした運動が、実際によく行われている。しかしながら、自転車エルゴメーターは一般の家庭に設置するには場所もとり、誰もが手軽に行えるものではない。歩行に関しては、手軽に実施できるという点では自転車エルゴメーターなどに比べ頻回に行われているが、単に「歩く」という行為は継続性の面において患者自身の強い動機づけが必要となり、独りで毎日の継続は困難であると思われるなどの物理的・心理的な面から欠点となることが多い。実際、臨床では個々の患者に対する具体的な指導について、運動習慣をいかに確立するかが問題となるところであり、最も難しいところでもある。
 こうした中で、「けん玉」を運動療法の一環として選んだ理由として表1のような利点があると考え、前述した今まで行われてきた運動種目の欠点を補うものであると考える。
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表1 けん玉の利点
(1)手軽に行なえ屋内外を問わず狭い場所でも可能
(2)連続した全身運動としての要素をもつ
(3)過去に行なったことがある人も多いことから、楽しみながら行なえ心理的抵抗が少ない
 (4)価格が安価
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